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俺達は少し駆け足になりつつグラウンドへ向かった。
グラウンドに着けば、やはりそこには無事に校舎から脱出できた生徒達が集まっている。
俺と裕真はその雑踏に混じって葉月を探した。
ーー見つからない。
もう数分程探しただろうか。
全校生徒の中から葉月の姿が見つからないのだ。
頭の中を駆け巡るのは最悪の状況ばかり。
今、この学園の生徒はふたつに分けられる。
生き残ってグラウンドまでたどり着いた「生存者」か、ロシア機の空対地ミサイルやその二次被害の餌食となり校舎の中で惨たらしい死に方をした「死者」か。
つまり此処に葉月がいないとなれば「死者」に分けられるだろう。
俺はそれをどうしても避けたかった。
その時、誰かが軽く俺の肩を叩いた。
恐らく裕真だろう。
「こいつはこんな非常事態に何を…」と心の中で呟きながら後ろを振り返る。
「りゅーくん大丈夫だった?」
俺の事を心配する様な声で彼女は俺に語りかける。
葉月だ、葉月が生きていたんだ。
俺はただ、「よかった」と連呼しながら葉月を強く抱きしめた。
人の目なんて気にしなくていい、今はただ二人とも生き残った喜びを分かち合えればいい、そう思ったんだ。
「りゅーくん、無事だったんだね、よかった」
葉月がいつも通りの愛らしい笑顔で俺の無事を喜んで背中に手を回してくれた。
「おいおい、人混みの中で映画みたいな事すんなよ…」
一緒に葉月を探してくれていた裕真が俺と葉月の姿を見ていつもの様に茶化す様な言葉をかけてきた。
こいつはもう普段の調子を取り戻した様だ。
全く、大した奴だと思う。
「えー皆さん、落ち着いて聞いてください。
先程、我が校は国籍不明の航空機による爆撃を受けました。」
顔のよく知った国語教師が、拡声器で拡大された無機質な声で全校生徒に呼び掛ける。
「なお、我が校は今日から暫く休校とします。
皆さんはもう帰宅してください。」
拡声器を使った国語教師の話は続く。
内容はこのまま帰宅しろといった意味の様だ。
友人や恋人を失った生徒だっているだろうに、殺生な話だとは思う。
だが、それ以外選択肢がないというのもまた事実である。
まあ、教師側の判断としては妥当な所だろう。
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