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「あんたも物好きね。あれ、アジア人でしょー
わざわざそんなの狙わなくたって、不幸な人はたくさんいるわよ、イリス」
「私はあれがいいのよ」
イリスと呼ばれた女は手摺の上に立ち上がると、自慢の長い黒髪を風に靡かせながら、ひらりとそこから飛び降りた。
落ちると思った瞬間、彼女の細い肩から真っ黒な羽根が生えた。
バサリと拡げられた羽根は、イリスを広場へと誘う。
美しいその羽根は、優雅に大きく羽ばたいた。
夕焼けをバックにしたその姿は、まるで天使のように美しく神々しいものがあった。
一つだけ、羽根が真っ黒なことを除いては…
綺麗な夕焼けだった空は、何処からともなく分厚い黒い雲が現れて空を覆っていった。
遠くでは、雷鳴が聞こえる。
大聖堂前の噴水に、ポツポツと雨が降り注いできた。
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