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雨足は段々と強まり激しさを増していく。
噴水の中に落ちる雨がバシャバシャと音を立てていた。
イリスは地面に降り立ち、翼をしまう。
過ぎ行く人は、足早に広場を駆け抜けていく。
先程の女も男もびしょ濡れだ。
妻であろう女は、必死に男にしがみつき何かを喚いている。
イリスは薄紅色の整った唇を小さく開けると、中から赤い光のようなものがポォッと飛び出した。
ビー玉ぐらいの小さな光は、イリスがふうっと息を吹き掛けると、喚き散らしている女の元へ向かった。
光の塊は、女に当たると雪のように溶けてなくなった。
その瞬間…
喚き散らしていた女はバッグから刃物を取りだし、男に襲いかかった。
「やめろ!冴子…!
こんなことして、お前ッ!!」
女の金切り声と逃げ惑う人々の叫び声。
イリスはその光景に満足するかのようにほくそ笑む。
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