1 ◆ 出会い

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『魔が差す』 とはイリスの得意としている所だ。 理性が邪魔をしているところに、ほんの一言、悪魔の囁きをぶつけてやればいい。 人間とは脆いもので、面白いようにイリスの意のままに動く。 この女も嫉妬に狂い、男と浮気相手を刺して、絶望し自害するだろう。 正気に戻った女の絶望が詰まった魂はさぞ美味であろうことは、容易に想像できた。 『嫉妬』 それは、この世で一番美味で美味しいスパイスだ。 イリスは、真っ赤な舌を出して唇を舐めた。 雨足は強さをまして、雷鳴が女の狂気を掻き立てる。 刺せ! 女がナイフを振りかざす空を切る音が何度も聞こえた。 不倫の男女は壁に追いやられて、逃げる場所がない。 「悪かった…冴子… この通りだ」 男は震えながら、妻に謝る。 そんな夫に腹を立てたのか、女は大きく振りかぶって男に襲いかかった。 「いけません!!」 .
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