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『魔が差す』
とはイリスの得意としている所だ。
理性が邪魔をしているところに、ほんの一言、悪魔の囁きをぶつけてやればいい。
人間とは脆いもので、面白いようにイリスの意のままに動く。
この女も嫉妬に狂い、男と浮気相手を刺して、絶望し自害するだろう。
正気に戻った女の絶望が詰まった魂はさぞ美味であろうことは、容易に想像できた。
『嫉妬』
それは、この世で一番美味で美味しいスパイスだ。
イリスは、真っ赤な舌を出して唇を舐めた。
雨足は強さをまして、雷鳴が女の狂気を掻き立てる。
刺せ!
女がナイフを振りかざす空を切る音が何度も聞こえた。
不倫の男女は壁に追いやられて、逃げる場所がない。
「悪かった…冴子…
この通りだ」
男は震えながら、妻に謝る。
そんな夫に腹を立てたのか、女は大きく振りかぶって男に襲いかかった。
「いけません!!」
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