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少年は落とした傘を拾うと、イリスに近づいてきた。
イリスの姿が見えるはずがないのに…
しかし着実に、彼はイリスに向かって歩みを進めてくる。
イリスの目の前まで来ると、彼はにこやかに笑ってこう言ったのだ。
「こんな雨の中に居たら、濡れて風邪を引いてしまいますよ。
よかったら、これを使ってください」
そう言うと、彼は自分が使っていた傘をイリスに持たせた。
「あれ?おかしいな。
君、濡れてない?
何はともあれ、風邪を引いたらいけないですから、遠慮せず使ってくださいね」
「貴様…何故
私が見えるんだ?」
「?」
イリスの質問にあどけない表情で、キョトンとする少年。
あまりの忌々しさに、彼を恐ろしい表情で睨み付けた。
「そうですよね。先ほどのあんな場面を目の当たりにしたら、さぞや驚かれましたよね」
イリスの肩に触れようとして、一瞬躊躇したが、ニコリと微笑んで宥めるように軽く触れた。
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