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零日目:突然変異
星の浮かぶ空。微笑むかのように、不気味な輝きを見せる三日月。耳に届く音は鈴虫の鳴き声とすすり泣き。
半分だけ残った建物。
わずかに残る、くすんだ白の壁に空いた穴はま四角だった。
屋根のない、瓦礫の塊の中では机や折れた柱、椅子が散乱している。
そんな生々しい傷跡を多く残したこの建物は……廃校か。
「マナちゃん、ここで死んだの」
瓦礫を指差す女の子。
「言わないでよ……」
泣きじゃくる男の子。
二人とも、背丈からして小学生低学年だろう。
若干、女の子の方が背は高いが。
「亜弥子ちゃん、怖くないの? 寂しくないの?」
泣きながらも、男の子が震えた声で問いかける。
「寂しくないよ。また皆に会えるもん」
女の子は、三日月と同じように笑っていた。
あの日の惨劇とは全く違う笑顔で。
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