首なし女

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父の実家は周りを山と海に囲まれている「田舎」でした。 家自体も木造の古い二階建ての建物で、畑が作れるぐらい大きい 庭と、冷たい水が出る井戸までありました。 この家が何時ごろ建てられたのか、祖父に聞いてみたのですが、 祖父の父親、つまり僕の曽祖父の代には既にあったそうです。 田舎では、グレ(メジナのこと)やアジを釣ったり、波打ち際に ボートを浮かべたりと、都会では絶対に出来ない遊びばかりで、 楽しくはあったのですが、毎年同じことばかりやっていると、さ すがに飽きてしまいます。 そこで、家の裏山に行ってみることにしました。 山へは五歳の頃、祖父と一緒に登ったことがありました。 そこまで大きな山ではなく、頂上に上っても、覆い茂った木々の 為見晴らしが大変悪かったのを覚えています。 でも、その山を登らずに少しばかり西へ進むと隣の森に出る、 と祖父から聞いたことがありました。 その森は、祖父が子供の頃までは付近の人間が所有していた のですが、その人が病気で死んだ後、家族もいなかったので、 一応国有ではあるものの、実質的には誰のものでもない土地 なのだそうです。 その時、祖父はこんな奇妙なことも話してくれました。
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