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昼光色の廊下の明かりに反射して光る刃。足元が抜けて恐怖に体が溺れる。健吾は一瞬で呼吸困難に至った。 理解できない。危機的状況に馴染まないとヤバイことになる。包丁と包丁を持つ人間が個々の死神に見え、やっと呪いが解けた。 2つの死神は冷たい表情で健吾を見続ける。背後に倒れ、逃げようにも、健吾は彼女から目を離すことが出来ない。 彼女が土足で廊下に足を運ぶ。距離が縮まるに連れて、感情の受け皿が崩れていく。恐怖を受信する機能だけが、運悪く残されてしまった。 「ちょっと待ってって! 死ぬとか無理無理無理無理!」 ゆっくり、ゆっくり、時間をかけて彼女は健吾に近寄る。小刻みに震えている手足を動かすが、どうにも逃げることができない。 殺される理由は無い。 デリヘルは性行為の本番は出来ない。しかし、ルールを破ったのは彼女の方からだった。 やはり殺される覚えは無い。 健吾は彼女に好意を抱いていただけ。 真摯(しんし)に向き合っていただけ。 死にたくない。死にたくない。こんなことで死ぬなら、デリバリーヘルスを利用するんじゃなかった。 後悔の渦が起こり、恐怖と混ざり合って巨大化する。
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