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コンビニ弁当が入ったままのビニール袋が踏みつけられる。プラスチックの容器が悲鳴をあげる。
恐怖に限界は無い。
彼女は恐怖の限界を引き延ばす方法を心得ていたのか、じわじわと健吾に迫った。部屋に逃げ込もうにも、下半身は固まったまま動けない。
遂に健吾の眼前に彼女が辿り着いた。観察するようにジッと見下す。
「頼むよ! こっ、殺さないでくれ!」
生への執着が勝手に働き、喉を操った。しかし、彼女は反応ひとつ見せずに、黙ったまま。本気の命乞いも届かない。
「くっそ……殺されたくねぇよ……久美ちゃんに」
死を待つだけの健吾は、恐怖を緩和できると思い、瞼を閉じた。
視暗恐怖に肩が上がり、身悶えする。これは悪い夢だと、今更になって願い始めた。
早く刺せ。終われ。早く終われ。
死を待ちながら、夢の目覚めを待つ健吾の耳に、少女の声が聞こえた。
「いまなんて言った?」
悪魔の囁きに耳を傾け、健吾は目を開けてしまった。
「うぉっ」
目の前には彼女の顔があった。冷たい無表情では無く、大きく開いた瞳で感情を表している。
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