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長谷川健吾には週に一度の楽しみがあった。 大学を中退し、投げ槍で入社した広告代理店に勤めて2年。社会人生活にも慣れ、健吾が一目散に着手したのは、祈願の独り暮らしだった。 誰にも邪魔されない至福の時間。自分のための環境を作る工程に喜びを感じた。健吾は、ただただ満足していた。 仕事に身も心も磨り減らされても、家に帰れば力が蓄えられた。自炊にも清を出し、23歳の独身生活に足りないものは一つだけ。 刺激という劇薬を健吾は探していた。
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