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生き甲斐は見つけた。しかし週に一度の時間制限付き。金は掛かるし、21時までに帰宅しておかなければならない。制約された条件があるというのも、条件が達成されたときに喜びが増す。 住まいのアパートに着くまで、健吾は溜め息を繰り返していた。 イレギュラーな事態や企画の締め切りに追われない限り、大抵20時には退社できる。今日はたまたま運悪く、自分が過去に担当した飲食店で、機材の故障が起きてしまい、修理業者と客の板挟みに合い、帰宅が遅くなった。 休日前の残業は損した気分になる。 健吾の溜め息は限られた休日が減ったからだけではない。 週に一度の本当の楽しみが、来週の土曜まで遠退いた。袋に入れて運ぶ際、バランスが重要なコンビニ弁当もどうにでもよくなる。 わざわざ分けて持っていた鞄と束ねて持ち、空いた手で鼻を擦った。
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