まるで赤い糸の出会いのようで

2/11
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
季節は冬の2月。もうすぐ春になるというのにその温かを感じることなのない、否定するかのごとく冷たい風が吹き 「へっくし!!!!・・・・・・・はぁー」 彼、七海伊織(ななみいおり)は寒さのあまりくしゃみを発した。 姉がくれた赤い手編みの手袋をポケットにしまい、鼻を啜りながら人気のいない校舎裏を歩く。 こんなに冷えるまで外に居てしまったのはなぜか。 それは同学年であろう見知らぬ生徒が、ゴミ捨てにきた伊織に声を掛けてきたのが事の発端だった。 自分よりも小さな身長で少し顔を赤くし、はにかみながら「あ、あの、七海くん、雑誌みました!すごくかっこよかったです」と自分に駆け寄ってきたのだ。 伊織はとある雑誌のモデルをやっていた。街でたまたまモデルをやらないか、と声を掛けられお小遣い稼ぎになるからいいか、と軽く考えてモデルになることを承諾したのだった。 それから何回かモデルとして雑誌に載っていくうちにみるみる人に知れ渡られ、そして見知らぬ人からも声をかけられるようになってしまった。 「七海くんが着てる服、すごく似合ってて、えと、あの、がんばってください!!」 最後は恥ずかしさからなのか、早口言葉で言い終わるとささーっと逃げてしまった。 お礼の言葉も告げられず、ただただ去ってしまったほうを見ているしかなかった。 自分と同じ、男子高校生を。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!