プロローグ

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 決闘といえど審判などいるはずもなく、開始の時間もルールもなにもなく、明確にすべきなのは勝者と敗者のみ。仲間の直接的な援護も魔法等による間接的援護も無しと暗黙のルールとして敷かれている以上、決闘の開始はこの2人に委ねられている。  未だ、迷いを抱える草薙勇を見かねてか、もう一人の総大将である輝くような金髪の少年は親友のような身近さで話掛けた。  「ユウ、懐かしいと思わないかい? この状況を……僕はまるであの日に戻ったんじゃないかって錯覚してしまいそうだよ。君と初めて喧嘩した日にね」  まるで重荷を下したような打ち解けた口ぶりに草薙勇は驚きを覚えつつも同じように砕けた調子で返事した。  「ああ、覚えているよ。……確かにこんな感じだったな」  違うのは成長した俺達と取り巻く環境、そして、彼に対しての感情だ。いや、決定的に違うところもある――それは――これから命のやり取りを行うという事だ。 「うん、まぁ……あの時とは状況が一緒でも違うところは多々あるけどね。で、ユウ。未だに迷ってるところを悪いんだけど、僕も君も互いに大切な人を奪い奪われあったはずだ。僕には、その憎悪も悔恨も水に流せるほど軽い命ではない友ばかりだったよ……そして、皆がみな、仇を討つのに躍起になっている。けど、それじゃ争いは終わらない。……だからもう一度、確認するよ? 僕とユウが決着を付けたら、敗北した側は勝者に従うこと。いいね?」  彼の確認にただ頷く。  もとよりそのつもりだから、この場に俺もお前もいるんだろう? 屍山血河の後の一時的な平和。このサイクルなんかよりも、人種や血筋、身分なんか関係なく全ての境界線が消えた新たな未来を創るために俺はここにいるんだから。  ……けど、その頑張りの基点はお前なんだぜ。お前が語ってくれた想いや願いに共感し、そんなお前にもう一度会いたくてここまで来たのに――こんな仕打ちはあんまりじゃねぇか!! 神様よっ!?
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