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ガチンッ・・・ガチンッ・・・
金属のぶつかる音が耳に入る。
目が覚めたばかりなのか、意識がはっきりするまでに時間がかかる。
次第に頭の中で整理が始まるが、何がおこっているのかが分からない。
目を開いているはずなのに何も見えない。光というものが周囲に存在しないためか、物体の認識が出来ない状態だ。
しかし、視覚が頼りにならなくても聴覚から分かることがある。
ジャリ・・・ジャリ・・・
腕を動かそうとすると鳴り響くこの音は、金属・・・そう、『手錠』同士のぶつかる音だ。
何故か両手が上にあがり、手錠とともに背後の壁に固定されているようだ。
そして足元はあぐらをかいて座っている状態。
なんなんだこれは。
まるで……
「囚人みたいだね」
「!?」
突如暗闇の奥から届く声。
俺が口に出そうとした言葉をそっくりそのまま言われてしまう。
誰だお前と尋ねる前に、その相手が口を開いた。
「やあ、目がさめたかい? といってもそれほど長い間眠っていたわけじゃないけれど」
「…誰なんだお前は」
「さあ、誰だろう? それは僕にも分からないや。でも大丈夫、そんなことは重要じゃないから。
重要なのは…そうだね、これからの君のことだ」
「これから…?」
中性的な声の主は続けて俺に語りかける。
「君は罪を犯した。だから償わなければならない。償いとして、君はこれから夢を見る。長い長い夢――――長すぎて醒めなかったりして」
くすくすと笑い声が聞こえる。
「ごめんね、つい笑っちゃたよ。おかしいってわけじゃないけど…運命って皮肉だよね」
そこで言葉を切り、ガサゴソとこちらに近付いてくるような音が聞こえる。
数秒後にはカチャリという音が鳴り、腕が自由になった。
「さあこれで君は自由だ。僕の役目は君をここから逃がすことだから、そろそろお別れだね」
「ちょっと待ってくれ! 逃がすとはどういうことだ…!」
俺はどうして――」
「何も教えられないよ。その代わりにプレゼントを上げる。
じゃあまたね――
夢から覚められますように」
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