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雀のさえずりが耳に届き、カーテンを開けると夏の日差しが体を照らす。
ベッドから体を起こし、ゆっくりと伸びをする。
――――夢を見た。
それは二年前の出来事だ。
俺はどこかの牢獄に捕えられていたが、何者かによって救われた後にこの世界に…『落とされた』。
どこから落ちたのかもわからないが傷はひどかったようで、動くこともなく倒れ伏せていた…。
「…ご飯できてる」
夢のことを思い出していると部屋の入口にいつの間にか女の子がいた。
その子は一言だけ告げると仏頂面のまま去っていった。
…二年も経つというのに、あの子にはずっと嫌われたままのようだ。
作られた朝食を冷ますと悪いので俺は何の変哲もない自分の部屋を後にする。
二階建ての家にある石製の階段を下りると、そこには白色を基調とした家具が揃うリビングがある。
壁沿いにある椅子に座り、テーブルの上に用意された朝食を食べ始めると、二階から別の人物が降りてきた。
「おや、今日は早いんだね」
髭を短く整えた短髪の30代後半くらいの男性は俺と向かいあうように席に座り、コーヒーを飲む。
この人は俺の父親代わりの人で、名前を雨宮オルガという。
オルガは二年前、街中で傷ついていた倒れていた俺を救い、身元が分からないのに家に置いてくれた人物だ。
ずっと世話になるわけにはいかなかったのだけれど、生活するだけの充ても費用も――そして世界の記憶もない俺は彼を頼るしかなかったのだ。
「ユスリはどうしたんだい?」
「分かりません、俺の部屋に朝食の報告をしてどこかへ行ってしまいました」
「はは、そうかい。あの子もそろそろ心を開けばいいのだけれどね…。
君達は兄妹なんだから」
二年前からそう言われているけれど、俺も彼女も…そうすんなりと受け入れらないんでいた。
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