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田舎から出てきた街暮らしとは言え、わずか一時間ほども車窓を眺めれば、故郷には帰ることが出来てしまう
それが、遠野生まれの河童ではなく、牛久沼生まれの河童のいいところであるような、悪いところであるような……
知名度は全くの逆だ
河童というだけで東北産まれの烙印を押され、ズーズー弁で話しかけられるし、鹿煎餅のように、南部煎餅を投げつけられるという不等な差別を強いられてきた
でも、河童である以上、遠野生まれがマジョリティ……河童のことをしらない人に何をいっても仕方がないこと……
GWに、河童は牛久沼に帰省した。あの人を亡くしてからは惨めな暮らしをしてるから、親に合わせる皿がなかったから、実家にはいかなかったけど、同窓会に呼ばれたの……
他の誰よりも相撲が強かっただけで、何の取り柄もなかった私……
「緑人間、緑人間」って虐められたけど、学校は嫌いじゃなかった。なぜなら……
『よう、久しぶり!』
「あ、や、山田くん!」
そう、高校のころから土浦のライブハウスで、バンドマンをしていた山田くん……彼は私に、毎日毎日、キュウリをくれた、やさしい……私の初恋の人………
ドキドキしながら山田くんと話す同窓会。とくに何があるわけでもないけど、幸せな時間
「へ~え、まだ音楽やってるんだ」
『土浦ではちょっとは有名なんだぜ、そうだ。こっちきなよ』
山田くんは私を連れ出し、駐車場に……まさか、や、山田くん……
……て、それはないか。彼はトランクを開け、ギターを取り出し、歌を聞かせてくれた
🎵この町を歩けば蘇る16才
……キュウリを貰うだけの、甘酸っぱい関係……それが、私と山田くん
🎵教科書の落書きは ギターの絵とキミの顔
……よかった。彼は相変わらずだ。夜の駐車場で、『🎵かっぱっぱ~❤』なんて歌われるのかと………ちょっと期待しちゃった……
🎵俺たちのマドンナ イタズラで困らせた
……彼は、相変わらずだ。河童の私にも優しくて、そして、かっこいい。そんな彼が……
🎵懐かしいその声 くすぐったい青い空
……私と、かっぱっぱ~なんてなるわけがないよね……
🎵ずっと、瓜だったんだぜ❗❗
え~、キュウリちゃうかったん⁉❗
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