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抱き合った二人は一つの塊となり、しばらく動かなくなったが、燭台の火が照らす薄暗い部屋の静けさを破ったのは、柔らかくもはっきりとした一言だった。
「今宵、発ちまする」
「今宵?」
「はい」
左胸の刺青――陽を食む龍の翼に口づけて、アルゴは逞しい腕の中で身を起こした。
「お前が行かずとも、戦局は既に我らが勝利」
「いいえ。私も兄様のお力になりとうございます」
そう答えて寝台から降り、裸身に寝衣を纏ったアルゴは、営みの余韻を早々と打ち切られて不満そうな相手に微笑み返す。
「――戦場では我が“月”も歓びますゆえ」
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