出立の刻

5/12
前へ
/105ページ
次へ
 自室に戻る前に湯浴みに向かう。  城内は元より、浴場の灯りも絶えることはないが、時は日付も変わる頃。賑わうわけもない。  人影一つなく静まりかえる浴場に着くなり、アルゴは寝衣を脱ぎ、全裸になる。  美の女神さえ恥じらう程、美しい裸体がそこにあった。  釣鐘形の乳房、引き締まった腹部とくびれた腰、丸い曲線を描く尻からすっと伸びた長い脚。  既に成人を迎えた齢十九にしては、華奢なほうだ。  無造作に髪をかき上げるアルゴの胸の谷間で、長さ二寸程の棒状の装飾品がきらりと白銀の光を放つ。  衣を床に落とし、広々とした浴槽に歩み寄ると、湯に静かにその身を沈めた。
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加