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『お前は女子のなりをした、男子か』
何度アジーンにそう笑われても、腹立つどころか誇らしく感じた。
貞淑でなくとも、何人をもかしずく強さがあればいいのだ。
少なくとも、この国では。
自室に戻る。
美しい肢体に変わらず薄衣を纏っただけの姿で石造りの廊下を歩くアルゴは、つと声高に発した。
「誰彼在る」
一瞬の間の後、柱の影から返事があった。
「お側に、アルゴ様」
「マチュア」
振り向かず、歩き続ける。
「予定通り、三時に発つ」
侍女のマチュアが、背後で膝まづいたまま答えた。
「支度、調えてございます」
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