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兵に比べて軽装備のため、アルゴの身支度は常に短時間で終わる。
鎖帷子を裏地に編み込んだ臙脂色の上下と軍靴に身を包み、腰のベルトに短剣を差した妹を紅い目で見つめていたアジーンは、やがて声を発した。
「アルゴ」
声のした方に向くと、部屋の入口に薄衣を素肌に羽織っただけのアジーンが立っている。眠そうだ。
「お休みになられたらよろしいのに」
「戦好きな妹を、父上に代わって見送ってやるくらい」
片付けをしていたマチュアがお辞儀をする横でくすりと笑うアルゴに近づき、アジーンは仏頂面で言葉を返す。
「どうということもない。……“影渡り”で行くのだろう?」
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