虹 Ⅲ

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あれからすこし月日がすぎて… 私たちは大人になった。 「もう、忘れ物!」 玄関で靴を履いている君に呼び掛ける。 「ん?あぁ。悪いな。」 君は苦笑しながら“すまん”とはにかんだ。 そんな君に呆れながら“ハイ”と四角い小包を渡した。 「あ。そうだ。」 と君は私を座ったまま見上げた。 「なぁに?」 「今日ちょっと遅くなるから。」 「…わかった。」 最近、このやりとりが増えた気がする。わかってるよ、仕事大変なんだよね。わかってる。 ――でもさ。 ねぇ、もうちょっとぐらいの我が儘言っていいんだよ? もっと私に言って? そんな、少しの言葉じゃ足りないよ。 滅多に口にしないあなたの我が儘、私なら聞いてあげられるから。
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