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「おー、古いな。釘とか使ってないから、ちゃんと自然に帰るようになってる。」
『200年くらい前から朽ちてるみたいよ。ここ。』
「夏陽って人が来なくなる前だな。ちょっとその人に会ってみたいなぁ…」
『無理でしょ。人間がそんなに生きていける訳ないもの。』
「そうだな。死んだら会えるように、覚えておかないと………っ!?」
会話しながら歩いていたら、森の外に一歩出た。その瞬間、背筋が凍る様な恐怖が俺を襲った。膝が抜けて、立ち上がれない。
「な………なんだ…これ………ひっぅ…」
ガタガタと震えが止まらないし、あまりの怖さに涙がボロボロと落ちてくる。
『ちょっと!官!しっかりしなさい!何が起きたの!?』
「こ……怖い……森の中は、結界で護られてるみたいに平和だったのに…外の空気が急に変わった…だ、誰かに見張られてるみたいな…」
『はぁ!?何それ?確かに森の中は世界樹の守護があるけど……魔力も無いあんたが感じるほどの感覚って何?』
「わからないから言ってるんだろ!これが世界のラスボスだったら、俺もう死んだ!絶対近づきたくない!」
わあわあ喚いているうちに、冷たいプールに入ってしばらくすると慣れる様に空気に慣れていき、俺の震えも治まってきた。俺は、ぐったりと力を抜いて木に寄りかかる。
「はぁ……はぁ……っふ…」
乱れた息を戻し、ゆっくりと立ち上がる。まだ少し震えていたが、歩けないまででも無かった。
「…行くか…こんな空気の中で、みんなどんな風に暮らしてるのか気になった…」
『がんばって。』
俺は歩き始めた。しかしここが一番近い町から3日分ほど離れた所にあるのを俺は知らない。
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