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目を開くと、木の優しい茶色が飛び込んでくる。辺りは明るい。
「………胃が空っぽになってる感覚がする…」
と言うことは、まだ俺は生きてるってことだ。むくりと起き上がる。
『官!心配したんだからね!』
「あぁ……すまんな。で、何があったか分かるか?」
百花の説明によると、声を掛けてくれた人が俺を運んでくれてここに寝かせてくれたらしい。水みたいなお粥を無理やり飲み込ませ、それを3日も続けてくれたらしい。
「なるほど、これはちゃんとお礼をしないといけないな…」
とそのまま来てくれるのを待つことにした。また倒れたら元も子もないからな。
「あれっ!?起きたのか!もう大丈夫か?」
1人の男性が入ってきた。金髪碧眼の所謂イケメン。
「えっと…このたびはご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。ありがとうございます。」
「いやいや。まだ生きてる様だったから。死んでたら道の端に寄せるだけだったんだけどね。運が良かったね!」
「あはは…ソウデスネ…」
なかなかシビアな世界の様だ。道端に死体が転がってても平気なんだな。
「それにしても…君、どうして倒れていたんだい?僕は女の子の声が聞こえて行ってみたら、君しかいなかったんだ。」
どうやら、百花はあの後話さなかったみたいで、今もおとなしくしている。
「あー……多分、その声はこれですよ。」
と、肩口に咲いた花を指差す。もちろん、百花だ。
「使い魔かい?」
「ちょっと違うんです。寄生されてる…って表現が一番合ってますね。」
「ふぅん……使い魔じゃないって言うのは珍しいね。あ、そうだ。これ、自分で食べる?」
とお粥の入った器を渡された。
「あ、ありがとうございます…」
「ひとまず、身体が良くなるまでなら置いてあげるから。そこから先は、ギルドに紹介状書いてあげるから自分でなんとかしてね。」
「は、はいっ!ありがとうございます!そんなにしていただいて…」
「いいのいいの。困ってる時はどうしても人の手を借りなきゃいけないからねー。」
サバサバしてるのか、優しいのか、よくわからない人だな、と感じた。
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