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風呂から出ると、そのまま朝ごはん。もちろん、風呂場で一緒だった彼も一緒だ。短時間で、ものすごい打ち解ける事が出来た。
「うーん…ヤバい、どれがどんな味だったかさっぱり覚えてない。」
確かに記憶にある見た目の料理が並んでいるのに、その味が分からない。これが長い間食という物から遠ざかった代償か。この前のお粥の時とかも、後から百花から聞いたりして名前を教えてもらったりしたし。一応食べ物とは分かるけど…
「ん?どうした?」
「な、オススメってある?」
「あぁ、確かに全部旨そうだからな。俺のオススメはこれとこれだ。パンに合うぞ。」
「……パンってどれ?」
「え?…………あ、えっとここのやつ。甘いのと、あんまり甘くないのがある。甘くないのは、バターとかジャムを付けると美味しい。」
「ありがとう。」
言われて、バターもジャムも分からず、迷わず甘いのを取った。トレイの上にそれをのっけて、言われたおかずをお皿に少しずつ載せた。それから持てるか分からなかったから箸とフォークを取る。
「うし、食べよ。」
「おん。いただきます。」
「?なにそれ?呪文?」
彼にそう聞かれた。俺は曖昧に笑う。
「これ、俺の生まれたとこの挨拶なんだ。自分に食べられる命に挨拶しなさいって事。食事出来る事に感謝しろってやつ。」
「ふぅん……良い習慣だな。俺も真似しよ。……いただきます。」
俺はさらに苦笑いを深くする。俺は、これを無意識に今まで言ってきた。でも、ここに来るまでに"食べる"という神秘を知って、心を込めて言えるようになった。"食べる"って本当に大切なんだと実感する。食べ物の飽和した世の中で生きてきた前の俺には、それがわからなかったみたいだ。
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