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「あ痛たた、ごめんなさい、大丈夫ですか?」
可愛らしい声だった。
腹を抱えてうずくまっていた真也はその声のした方に顔を向けた。
そこには尻餅をついた姿勢でこちらを見る小女がいた。
状況から考えるまでもなくこの少女とぶつかった事が伺えた。
「ああいや! こっちこそごめん、大丈夫か? 血が出てるぞ?」
その女の子の手を引き、起こした真也は、その少女の手のひらに血が滲んでいるのを見た。
多分転んだ時に擦りむいたのだろう。
「痛くないか? 流石に消毒は出来ないけど、これで勘弁してくれ」
ポケットからハンカチを取りだして少女の手に結ぶ真也。
女の子が何か言いたそうにしていたが「あ」と言う言葉より先は発せられる事はなかった。
「ああ別にハンカチは返さなくても良いから、はい鞄。
急いでたんじゃないのか? ほんとごめんな」
「あ、いや、ありがとう……ございます」
礼を言った少女は鞄を受け取ると、俺達が向かおうとしていた方向へと駆けていった。
顔が真っ赤だったが大丈夫だろうか。
そんな心配をしていると、後ろで見ていた鬼崎が声を掛けてきた。
「良かったな一條、お望み通り衝撃的な出会いが出来たじゃねえか」
「物理的に衝撃を食らうのは想定外だっつうの、ああ、まだ腹イテぇ」
腹を擦る真也を見て、天音は何やらニヤニヤしている、まあ何かろくでもない事を考えているのだろう。
「衝撃的な出会い(物理)とか、まじ受ける、く、ふふふ」
うわぁ、こいつ腹立つわあ。
真也の眉間にシワがよった。
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