本気でパワースポットだった…。

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まあそれはともかく、滝壺に水が注ぎ落ちるようなバシャバシャバシャという音を聞いた俺は、今までの疲れも忘れ、その音の発信源へと駆け足で近づいていた。 ザザッ。 足元の緑草が舞い、風に乗ってしばし中空を漂う。 そして。 「あった! 古戻の滝!」 初めて見る光景に喜びの声をあげた俺だったが、その1秒後には、 「しょぼ…」 そんな暴言をパワースポットさんに向けて浴びせていた。 …だって仕方ないじゃない。 その滝、落差3m、幅2mくらいの、思わず『用水路かよ!』ってツッコミたくなるようなお粗末さだったんだもの。 「…こんなんじゃ、ご利益(りやく)も期待できそうにないな…」 ここまで山登りした苦労や、たどり着いた時の感動が、そのガッカリ感をひとしお引き立てる。 まさしく徒労感120%。 例えるなら、サンタさん(と書いてお父さんと読む)に新しいゲームソフトお願いして、一生懸命お母さんのお手伝いをした小学4年生のクリスマスの朝、起きたら枕元にデ●ゴスティー●の『かたつむりの生態』が置いてあった感じ…。 しかも初回半額版のやつで、全巻書うと『動く等身大かたつむり』が出来上がるやつをもらっちゃった感じ…。 …思えばアレをもらった時から、オレはDQNの道を歩み始めたんだな…。 感慨深い思い出に浸るオレ。 そんなオレの視界に、滝壺に注ぎ込む、緑を極限まで透明に薄めたような水流が映り込む。 それは滝壺で弾け散り、霧のような水しぶきをつくり、陽光を受けてキラキラと輝きを放っていた。 オレは思った。 …さすがパワースポットなだけはあり、流れている水だけはとんでも無い透明度だな… …正直綺麗だな… と。 そして続けて思った。 …澄んだ空気のように透明で美しい水が木漏れ日に照らされ、水面が綺羅星のように輝く様は、まさに神が降臨したかのようだな… …オレはこの光景を見るために生まれてきたんだな… と。 …ウソです。 言い過ぎました。 せめてそうでも思わないとやってられないので、30倍くらい誇張しちゃいました。 …まあ、流れる水と周りの緑が綺麗だったのは本当だけど。
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