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俺を見る翔太の目は、数秒前と同様、三日月形に見開かれていた。
怒りの感情がこもった目でこちらを……と思ったが、何か様子がおかしい…。
……さっきよりもさらに大きく見開かれたあの目から感じとれるのは、“ 動揺 ” ……?
……それにヤツが見ているのは、俺じゃなくて、“ 俺の後ろのほう ” ……?
……なぜ……?
そこまで考えかけた時、翔太の唇がわなわなと震えだしていることに気がついた。
「…や…ばい…」
…や…ばい…?
不思議がる俺の目の前で、同じ唇が、今度はさらに大きく開かれる。
「やばい…!!
運転手さんっ、何やってんだッ!!?」
パニックを起こしたような口調で独り言を言う翔太。
続けて、背後の良雄と左側手前の座席のほうを向き、叫ぶ。
「…良雄くんっ、智紀くんっ!!
早くシートか何かに全力でつかまって!! …あと七夜くんっ、キミも急いでっ!!」
「……?」
…はじめ、翔太が悪ふざけをしているのかと思った。
翔太の真後ろに座る良雄も、同じようなことを考えたらしく、呆れた口調で言う。
「はぁ?
何ワケのわかんねぇこと言ってんだぁ?翔太ぁ?」
自分も良雄と同じ立場なら、おそらく同じ言葉を口にしていただろう。
しかし、焦りを帯びた翔太の表情からは、悪ふざけだとか演技だとか、そんな様子は一切感じられない。
あれがもしウソや演技だとしたら、俳優になれるレベルだ。
翔太はさらに、なぜか手前にあった座席の背もたれにつかまりながら、バス中に響き渡るような声で叫んだ。
「こっ、このバスっ……ガードレールに向かって突っ込んでるッ……!!!
あ…あと数秒でぶつかるッ……!!!
助かりたい奴はッ、近くにある何かに急いでつかま…」
翔太の叫び声は、そこで途切れ──。
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