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その日の夜。
めいめいがテレビを見たり、本を読んだりしてリビングで寛いでいた。
「布結-、コーヒーいれて。」
『なんで当たり前のように、言ってくるのよ!自分でやってよ、貴船さん!』
「今日助けてやったでしょ?もう恩を忘れたの?」
『助けて…って、誰のせいだと思っているのよ、もう!』
他の住人は、距離の縮まった様子の二人を、興味深そうに観察していた。
一人を除いて。
「おいっ!和歌とばっかイチャついてんじゃねぇ!
買い物行くからついて来い!」
腕をむんずと掴んで、外に連れて行こうとする
あくまで余裕の和歌は「布結-、ついでにアイス」
と去っていく背中に呼び掛けた。
『ねぇ、何買うの?』
『ねぇってば!お財布は?』
布結に言われて気が付いた。あ-…手ぶらできちゃったよ……
『私もお財布持ってない…せっかく来たのにゴメンね。』
引きずられるようにして来たくせに、なぜかしょんぼりする布結。
気が強いと思ったら、やたら純粋で。
『あっっ!あった!』
どうやらポケットに100円入っていたらしい。
『ね、これで買える?
…足りないかぁ…
子供の買い食いじゃあるまいしね…』
俺が返事しないうちに、一人で納得して一人でしゅんとしてる。
ダメだ我慢できねぇ!
「っはははは!オマエ面白いなぁ!一人で…っはははは!」
布結は驚いたように目をみはると、自分も笑った。
『もう!笑い過ぎっ』と言って俺の腕をつねる。
いってぇ!どうして俺には暴力的なんだよっ!
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