穏やかなる日常

8/14
前へ
/952ページ
次へ
その日の夜。 めいめいがテレビを見たり、本を読んだりしてリビングで寛いでいた。 「布結-、コーヒーいれて。」 『なんで当たり前のように、言ってくるのよ!自分でやってよ、貴船さん!』 「今日助けてやったでしょ?もう恩を忘れたの?」 『助けて…って、誰のせいだと思っているのよ、もう!』 他の住人は、距離の縮まった様子の二人を、興味深そうに観察していた。 一人を除いて。 「おいっ!和歌とばっかイチャついてんじゃねぇ! 買い物行くからついて来い!」 腕をむんずと掴んで、外に連れて行こうとする あくまで余裕の和歌は「布結-、ついでにアイス」 と去っていく背中に呼び掛けた。 『ねぇ、何買うの?』 『ねぇってば!お財布は?』 布結に言われて気が付いた。あ-…手ぶらできちゃったよ…… 『私もお財布持ってない…せっかく来たのにゴメンね。』 引きずられるようにして来たくせに、なぜかしょんぼりする布結。 気が強いと思ったら、やたら純粋で。 『あっっ!あった!』 どうやらポケットに100円入っていたらしい。 『ね、これで買える? …足りないかぁ… 子供の買い食いじゃあるまいしね…』 俺が返事しないうちに、一人で納得して一人でしゅんとしてる。 ダメだ我慢できねぇ! 「っはははは!オマエ面白いなぁ!一人で…っはははは!」 布結は驚いたように目をみはると、自分も笑った。 『もう!笑い過ぎっ』と言って俺の腕をつねる。 いってぇ!どうして俺には暴力的なんだよっ!
/952ページ

最初のコメントを投稿しよう!

523人が本棚に入れています
本棚に追加