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「あ、そうだ。」
となりから不意にそんな声がした。何を思い出したのか知らないけど私には縁のない話しだろう、とタカをくくってプリントとにらめっこをしていたのだけど「オマエ、今日も買って来い。」と声をかけられた。
「…何を?」
「昨日と同じ奴。」
「嫌だけど!?」
「文句言うのか?」
幼馴染は私を睨みつける。
「はい、行ってきます。すいません」
あまりにも怖かったので迷わず、全力で首を縦に振った私がここにいた。そして、言ってから気付く。…他の人にも頼まれてたよね、と。
気づいたところで断れる相手でもないってのは百も承知ですけど…。改めて自分の馬鹿さ加減を恨む。
「あの…笠松サン?」
「あ?」
「あの…お金は…?」
「後で払う」
さいですか。
さて、ここで乗じた問題をどう消化しよう。あの訳の分からない不良にも買った物を渡さなければいけないし、この幼馴染にも渡さなければならない。じゃ、どっちが先?
あの不良を先にすると…真紘が怒るに決まってる。「遅ぇんだよ」と貧乏ゆすりしながら言ってそう…。
じゃ、真紘を先にすると…?
ここで、もうひとつ重要な話につながる。真紘はおそらく教室にいてくれるはずだけど、じゃああっちの不良は?聞いとくんだったなー、と今更後悔する。
じゃ、真紘に渡してから適当に探す、ということにしよう。
直後、チャイムが鳴った。
結局…化学の宿題は終わらなかった。
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