始まりの朝

4/13
前へ
/97ページ
次へ
「おーい拓郎ー!!」 「タクローくーん!!」 「タクちゃん出ておいでーーっ!!」 日は落ちて辺りは完全な闇夜であった 視界を写すのは数々の懐中電灯の明かりだけ 「そっちはどうだ?」 「全然見つからねぇ...あいつ怖がりのくせによ...」 「お、おい!これを見てくれ!」 一人の男が地面を指差して大きく叫んだ そこは落ち葉の間から顔を出す泥地だったがそこに小さい靴跡があった 「これって...」 「間違いねぇ、拓郎のだ」 その周辺にも僅かながら足跡が点々と林の奥へ続いている この先にあるのは小さな鍾乳洞だったはずだ 「行きましょう!」 「おう!行くぞ!」 村の男性陣とシエラは足跡の先にある鍾乳洞へと向かって行った 洞窟の中は薄暗く、懐中電灯の光も奥までは届かない だがタクローのものと思われる足跡はそこにもあった 「拓郎ー!!」 「タクローくーん!!」 声を上げるが反応はない ただ延々と続く闇 反響する声だけが聴覚を支配する 「どうしましょう...?」 「まだ諦めるな...きっとここに...ん?」 ふと、男の視界に動くものがあった それは岩陰に隠れた小さな影 光を当てられた姿は間違いなく───。 「拓郎!!」 「タクローくん!」 後姿で十分に分かる そこにいた彼の姿に全員が安堵して 「おいお前こんな時間まで何してたんだ?みんな心配してたんだぞ?」 一人の男性がタクローに近づく その肩に手を掛けた瞬間 「....え」 その少年は弧を描く俊敏な動きで男性の首筋に食らいついていた
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加