―序章―

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 青い星、地球。  広大な海を臨むように建てられた白い大きな建物。  『人間』の豊富な知識とその手先の器用さにより造られた建築物。その造形美にはいつも目を見張るものがある。  この建物も、室内をまばゆく照らしているあの"シャンデリア"も、実に美しい。  そんな事を考えながら、ゼクは隙間なく敷かれた赤い絨毯(じゅうたん)を踏み締めていた。  濃いグレーのローブをきっちりと着こなし歩く様はとても威厳(いげん)がある。  しかし、彼の威厳はそれだけでは無い。  その背に輝く純白の翼は、彼が『天使』であることの証。  天使達が住む天界と、地上の人間界は同盟を結ぶ間柄(あいだがら)。  そしてゼクは、その"架け橋"を待ち望んでいた。 「ゼク様!」  ゼクの元に1人の男が慌ただしく駆けて来る。人間の医者と呼ばれる者だ。 「無事にご出産なさいました!」  ゼクの厳(いか)つい顔が喜びに緩(ゆる)む。 「して、どちらだ?」 「元気な女の子です」  平和を謳うにはまさにぴったりの逸材(いつざい)だ。 「しかし、少々変わったところがございまして…」
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