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『――リオン』
(お母さん…いつもわがままばっかり言って…ごめんね…)
「…ォン、リオン!おい、起きろ!!」
「んが?!」
「…変な声」
目を開けると、浪鴉の笑顔が目の前にあった。
「浪鴉…?僕達…死んだの…?」
「よく見なよ。ちゃんと生きてる」
そう言われて、改めて確かめる。痛みも無い、串刺しにもなっていない、触れる。
本当に生きている!
「リオン、すまないが縄を解いてほしいんだけど…。あと、重い」
「え?」
見ると、リオンは浪鴉の上に寝ていたようだ。
「わっ、ごめん!」
「いや、大丈夫。重いというのは冗談だ」
「助けてあげたのにッ、なんでそうからかうのさ!」
「フフフ…またその顔が見られて嬉しい」
リオンはポカンとした顔で浪鴉を見つめた。そういえば、リオンとしても浪鴉の笑顔を見るのがなんだかずいぶん久しぶりのような感じがする。
お互い、二度と会えなくなるかもという恐怖心にかられていたのだ。
今までの緊張が一気に解け、リオンは全身の力を抜いた。途端、グラリと視界が揺れる。そういえば、さっきから凄い風を感じる。
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