負けると分かっている勝負なら、どんな事をしてでも勝とうとしろ

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「君に決闘を申し込むよ、裕也」 「いいぜ、ボッコボコにしてやるよ」 「駄目に決まってるだろがこのガキ共!」 覚悟を決めた顔で裕也に宣言する龍司に、なんの躊躇いも無く承諾する裕也。 そこに扉を開けて珍しく怒号を放つギン先生(風帝)。 「なんで?」 「なんでもクソもあるか!Zランクの決闘がまかり通ったらやりたい放題だろが!常識だくそ勇者!」 強い者にはある程度の権力と制約が加わる。それはギン先生が言うように、どこかで妥協点を決めておかないと人外とも呼べるようなギルドの高ランクを持つ者はやりたい放題だからだ。 「つまり......私闘ならいいと?」 「それだと勝ったほうが犯罪者になるだろが!だいたいそいつと決闘なんてお前に大してメリットはないだろ、ヤナギ兄」 「あるし。合法的にこいつをボコボコにできるし。メリットしかねえじゃん!」 冗談のように笑いながら言う裕也だが、冗談ではない。裕也は、殴られた時点でキレていた。 自称聖人君子である裕也だが、前の世界から積もりに積もった苛立ちと、そしてそれを爆発させた暴力。止められないし、止めるつもりもない怒りは、笑顔という仮面の下で沸騰している。 「それに、SランクがZランクに勝てるはずがないだろ。やめろ」 「どうしても?」 「どうしてもだ。出来ないっていうなら、学園の生徒として、お前らの頭が冷えるまで、停学処分にする」 「......」 「......」 無言でジッと互いの瞳を探り合う裕也とギン先生。 〈別に決闘じゃなくてもいいよね、裕也〉 その時、裕也の頭に、龍司からの念話が送られてきた。 〈さぁな。お前が言い出したことだろ〉 〈僕としては、裕也に勝って、僕の命令をちゃんと聞いてくれるなら、決闘にこだわるつもりはないよ。模擬戦とか適当な建前でもいい〉 〈俺が勝ったら、俺の命令を聞くならなんでもいいさ〉 〈じゃあこの場は適当に流して......文化祭が終わった次の日。その日に戦う〉 〈いいぜ。それまではお前の茶番も我慢してやるよ〉 〈絶対に負けない。僕はもう、決めたよ〉
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