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戦争が終わった次の日。国内ではお祭り騒ぎである。
だが、シーナ=ヤナギは、そんな騒げるような気分ではなかった。
自分が想いを寄せる、血の繋がりは全く無い兄である裕也=ヤナギが、昨日から帰ってきていないのだ。
いつもなら出かける前に何か一言でも言ってからどこかに行くのだが、今回は何も言っていかなかった挙句、夜になっても、朝になっても帰ってきていないのだ。
だから、まずは部屋中を探し回る。
すぐに異変を感じる。
特待生部屋であるこの部屋のどこにも、自分以外が誰もいないのだ。
裕也の使い魔であるルシファーとマオはともかく、いつもなら部屋で寝ている藍までもがいなくなっている。
シーナは裕也の身に何かあったのではと考えが過るが、すぐに否定する。
自分の兄は、例えシーナが本気で殺そうとしても笑いながら片手だけでどうにかしてしまうような人物なのだから。
それに加え、常にふざけてはいるが化物のような使い魔もいるのだから。
なら、どうして帰ってこないのか?
......もしや、自分はもう見捨てられたのではないのか。
裕也にとって、シーナはたまたま助けて一緒に住んでいるだけで、どうでもいい存在なのではないのか。自分が一方的に大切な人だと思っていただけじゃないのか。
いや、そんな筈はない。
シーナは頭を振り、最悪の考えを消す。涙が零れ落ちそうな瞳を我慢して、今度は外へと探しに行く。
だけど外は、賑やかに騒ぐ人達で、とても一人の人間を探せるような状態ではなかった。
シーナは国内を探すのを諦め、寮へと帰っていった。
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