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「被害を受けた生徒は。」
「結構な力で殴られたっぽいですねー。
殴られた勢いでふっとび、近くの机で頭を打ち、額を切っています。
頭だったので出血は多かったですが、縫うほどではないそうですよ。」
「そうか…。」
西川と言えば、学園の中でも一匹狼を気取った不良だった筈だが、いつの間に転校生の飼い犬になったのやら。
そもそもそれなりの腕っ節をもっている人間が、一般生徒を手加減なしで殴るか普通。
「で?いかがなさいますかー、松本蓮(まつもとれん) 風紀委員長?」
へらりとした笑みを向けながら、俺に尋ねてくるのは桐谷雅(きりたにみやび)。
俺と同じ風紀委員、ちなみに副委員長だ。
「面倒臭い事この上ないが…、仕事だからな。“どちらも”。」
ため息をついて口を開く。
「西川に全校放送で呼び出しをかけろ。風紀委員室に来るようにと。
お前も放送が終わったら帰ってこい。」
「はいはい。了解しました。蓮様。」
「…その呼び方で呼ぶな。不審に思われたらどうする。」
「大丈夫ですよ。誰かいる気配もないし。あんただって分かってるでしょ?」
「まぁそれはそうだが…」
「まったく、護衛対象が次から次へと面倒事もってくるんですからやってらんないですねー。」
唇を尖らせる相手に思わず苦笑する。
「お前にも苦労を掛けるが、仕事だからな。やるしかねえよ、雅。」
素の口調でそう伝えると、蓮は雅に背を向けて歩きだす。
「先に風紀委員室で待ってるぜ。」
後ろ手にひらりと手を振ると、雅は苦笑しながら一つ頷いたのだった。
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