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「初対面でいきなり『面白い』とか言われたんだよなぁ。
いくら普段から人とコミュニケーションとってないからってあれはどうなんだ。」
「五月蠅い。何を言ったかなんてもう忘れた。」
あの時のように一つに括った長髪を風に揺らしながら、からかうように話しかけている男の名前は蓮( れん)という。
苗字は教えられていないが、相手の名前にそこまでこだわる質でもないので特に気にしていない。
蓮は楽しそうな声で話を続ける。
「いや、でも俺は思ったよ。こいつよくこの状況で俺に話しかけたなと。」
「ククッ…話しかけた時はなかなかの間抜け面だったな。」
「うぉい、思いっきり覚えてんじゃねぇかよ。」
本を片手に話す男の名前は黒崎裕也(くろさき ゆうや)。襟にかかる長さの頭髪は金色で、二人のいる屋上に降り注ぐ陽の光をきらきらと反射させている。
「もうそろそろお前に会って1年か…。」
「何?そろそろ一緒にいるのに飽きてきたか?」
口端に笑みを浮かべて蓮が尋ねると、裕也もふっと笑って首を横に振った。
「まさか。お前みたいに予想のつかない非常識な人間と一緒にいて、飽きる訳がないだろう。
本当に退屈しないよ、お前といるとな。」
「…そんな優しげに笑いながら堂々と毒吐くなよ。」
「ん?褒めたじゃないか。お前といると退屈しない。」
「いや、そこはともかく前半のあれは世間一般で褒め言葉とは言わねぇよ…?」
蓮は何かを諦めたように呟きながら額を押さえた。
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