プロローグ

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「ってかそもそも、俺が怪我してたってお前には関係ねぇだろ。」 「ほほう…。」 ただでさえ淡々とした物言いをする裕也の声が1オクターブほど低くなった。 あ、やべぇ。なんか地雷踏んだ。 そう思った時にはもう遅かった。 裕也はそのまま距離をぐっと詰め、 「なら俺も、勝手にさせてもらおう。」 そう言った裕也の手に握られていたのは…針と糸。 聞きたくはないが… 「えっと…。とりあえずそれの使い道を教えてもらっても良いかな?裕也クン?」 「ん?その傷を縫おうとしているが何か問題でも?」 「問題だらけだよ。」 思わず後ろに後ずさりながら蓮はひきつった顔で応える。 その顔を面白そうに眺めながら、針をきらりと光らせて裕也は意地の悪そうな笑みを浮かべた。 「そもそもな、そんな毎回毎回怪我してたらこっちだって気になってしょうがないだろうが。  目障りだ。つべこべ言わずに治療させろ。」 「裕也…目が据わってる。冗談に聞こえないから勘弁してくれ。マジで。」 「いいからさっさと傷見せろ。マジで縫うぞ、もちろん麻酔無しでな。」 その顔に浮かぶのは悪魔さながらの笑みだった。 目が怖い。これは傷見せるまで治まんねえな その様子に蓮は一つため息をつくと、傷のある肩を見せた。
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