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「ってお前それ…明らかに刃物で切られてんじゃねぇか!!」
滅多に声を荒げない裕也が噛みつく勢いで蓮に詰め寄る。
その反応を予想していたように、蓮はもう一度ため息をついて目を逸らした。
「見せても見せなくても怒鳴られるこの理不尽さ…。」
「喧しい。」
容赦なくベシッと頭を叩かれた。
…地味に痛い。
「馬鹿か。馬鹿なのかお前。何こんなもん放置してんだ。包帯も適当に巻きやがって。」
ぶつぶつ言いながらもテキパキと包帯を巻いていく。
その様子を蓮はどこか不思議がる様子で見ていた。
その視線に、裕也が訝しげに眉をひそめる。
「何だ。」
「いや…。」
まじまじと包帯の巻かれた腕を見つめている蓮を、裕也は訝しげに見つめた。
「包帯ってこんなにピンと真っ直ぐ巻けるもんなんだな。
自分で巻くとどうしても解けてくるんだよな…」
「下手くその癖に自分でやろうとするからだろう。
なぜ周りの奴にやってもらわない。」
「さーてね…。周りの奴らは俺よりも不器用な奴ばっかりなんだよ。
お前こそ、いつも思うんだが手慣れてるな。
医者でも目指してんのか?」
さらりと話題を変えてみる。
表情は変えずに、何食わぬ顔で嘘をつくのは得意だ。
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