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裕也は疑う様子は無く、俺の質問に答えた。
…いや、もしかしたら俺が話題を変えたことに気が付いているかもしれないけれど。
「あぁ、まあな。
一応医療系の学校を目指してる。
だから応急処置やら、怪我の基本的な処置は頭に入ってるな。」
「…え。マジ?初めて聞いたけど。」
予想に反してすんなりと返ってきた返事と内容に目を瞬かせる。
「別に今まで聞かれなかったしな。
でも隠すもんでもないし?」
「ほーう。なるほど、頭は良いと思ってたが、まさかの秀才君か、裕也クン。」
「別に秀才というほどのものでもない。
…他に怪我は無いな?」
じろりと睨みあげるように、裕也は蓮に尋ねる。
「あぁ、ねえよ。俺だってそう何度もドジるわけじゃねーの。」
「そうか。」
取りあえず裕也は納得したように救急セットを片付ける。
すると蓮の携帯が着信を告げた。
「あーあ。お呼び出しか。」
「例のバイト先か?」
「そーそー。結構頻繁にシフト変更されるから困ったもんだよ。」
少し困ったような笑みを裕也に向けながら、蓮は近くに無造作に置いてあった上着を羽織る。
「行くのか。」
「あぁ。悪いな。包帯、ありがとな。」
「何だ。素直に礼なんて言うな気持ち悪い。」
「ひでぇな。」
素っ気なく言いながら、軽く手を振る裕也に苦笑すると、蓮はその場を後にした。
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