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だんだん話が読めてきた。と同時に俺の眉間にしわがよる。
「…それってつまり、その息子がその転入先の学校に通う間、俺も一緒に通えとかそういう話じゃないよな?」
「おい、敬語はどうしたクソガキ。そんなあらかさまに嫌な声出すなよ。」
「つーか有数の企業っつっても、霧生グループはうちの組織が動くほどの大手じゃねえだろ。」
「お前、だから敬語…、ったくもういい。
何故かボスが受けたんだよ。んで、お前をご指名したわけ。」
「…あの人が?何で…」
最近直接会ってはいないが、あの人はメリットにならない事はしない筈。
霧生グループなど、わざわざうちの組織が気にするほどの企業ではない。
疑問ばかりが浮かんで眉をひそめたが、相手は気にした様子もなく続ける。
「さあな?まぁ学校での護衛なんて、お前にとっちゃ簡単なもんだろ。」
「そりゃそうだけど…。」
「長期の休暇と思っとけよ。
お前、本当ならまだ普通に学校行ってる歳だろ。どんなもんか、体験してくるのも良いんじゃねえか。」
「はぁ…。分かった。どっちみちあの人の指名なら断れない。」
あいつとも…お別れだな。
この日を境にして、蓮は街から姿を消した。
『もう会う事はないと思う。お前と過ごす時間は結構楽しかった。ありがとう。 【蓮】』
二人で過ごした屋上に、短いメッセージを残して。
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