6章

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そこまで観察して蓮はふむ、と手を顎にやる。 本来なら、一応自分に与えられた仕事に対しての責任感はあるのかもしれない。 そんな彼がこうなるまで与えられた仕事を放置していたのは。 「恋は盲目…といったところか?」 昔の人もよく言ったものだ。 「ッ…馬鹿だと言われても仕方ありません。  揃いもそろって、与えられた職務を放り出してまで  一人の生徒を追いかけているんですから。」 自嘲の笑みを浮かべながらそう言う副会長に、いつもの皮肉気な雰囲気はない。 きっと本心から今までの自分を悔いているのだろう。 自己嫌悪に、消沈としている副会長を見て、一つため息をつくと蓮は口を開く。 「まぁ、少し冷静になれたんならいい。」 その言葉に、副会長が驚いたように軽く目を見開いたのを視界にとらえ、蓮はわずかに笑みを口の端に乗せる。 「どうした。」 「いえ、あの…それだけですか?」 「ん?」 「いえ、ですから…今まで相当な仕事をあなたに押し付けてきた上…、  普段はあんな態度ですし。  もっと責められるものと…。」 「そりゃあ、俺だって怒る時は怒るけどな。  でもお前は自分の非を認めて、後悔もしているだろう?  これ以上俺が責め立てる必要はないだろ。」 それに… 「恋に全力なのは若者の特権…ってな。  ちなみに初恋か?副会長。」 そう言って今度は少しにやりと笑えば、副会長の中性的な端正な顔にさっと赤みが差した。
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