ルール

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――――――――――――― 特殊刑務所 時を遡り、少年達が小滝六峰スタジアムで戦いを繰り広げる少し前の事。 湿った臭い。 蔓延るカビ。 その上をゴキブリが這う。 鉄格子には前に居た奴が付けたと思われる赤黒い汚れが付いている。 この臭いにも、もう慣れた。 ドアの無い、仕切りだけのトイレで用を足すのも慣れた。 ご飯はまぁまぁ、上手い。 窓から漏れる陽の光が暖かい。 一部汚い部分はあるが、他は清潔に保たれている。 カタン カラカラ カタン 奥の方から配給係が一つ一つ、回っている。 次は俺の番だ。 「晩飯だ」 食器を乗せた一つのお盆が専用の隙間から出される。 配給係は向かい側に居る囚人にもお盆を渡す。 「お願ーい、もう少しくれよー」 「黙れ。黙って食え」 「んだよクソッ!! ケチケチしやがって!」 扉を強く叩き、怒りを露わにする。 またか。 向かい側の奴は配給の時間になると、あぁやって、飯を強請っている。 「おい」 「………」 「おーい!」 ドンドンドン! 「泣川朧さーん! 無視するなぁー」 小さな窓から顔を覗かせ、茶碗を片手にこちらを見ている。 またか…。 こんな調子で晩飯になる度に話し掛けて来る。 俺は相手の名前は知らないが、相手は何故か俺の名前を知っている。
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