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探るようにかけられた声にピクリと反応すると、そこにあったのは誤魔化すこと無く作りましたと言わんばかりの薄ら笑み。
「どうかした?」
「い、いえ…何も。」
一瞬、気圧されて密かに身震いしたくらいで。
それは他の女の子達に向けていた嘘の笑顔より、たちが悪い。
「そう…じゃあ少し移動しようか。この人混みの中じゃ、俺らの姿も見つけにくいだろうしね。」
部長は馴染みのタクシーが2~3分で来ると告げて、私の手を強引に引き寄せる。
「…ええ。」
もう無駄な抵抗はやめた。
きっと今宵は嫌でも長い夜になるのだと腹を括り、誘(イザナ)われるままついて行く。
「足元まだフラついてたけど、大丈夫?」
表通りの路肩に着くなりほんの1分弱で、タイミング良くやって来たタクシーの後部座席に乗り込んだ途端、さも当然とばかりに横へ座り肩を抱いた部長が尋ねる。
多分…私的見解では、一気にガブ飲みした大量の酒が軽く走った事により、急激にアルコールが回ったのと…
プチパニックを起こした、精神的なものとが重なったせいではないかと思われた。
「多分…」
「そっか…でも、帰ったら直ぐに休んだ方がいいね。」
……え?
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