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「…精神的なものかしらね?今日は色々あり過ぎて…夢見まで悪くなったんだと思うわ。…ごめんなさい、あなたの家にまで上がり込んで…」
そう謝罪しながら。
この男も今現在、私を苦しめる存在の一人なのだと改めて再認識させられていた。
「…もう、いいの?」
「え?…何が?」
「話し、最後までちゃんと聞くつもりでいたんだけど?」
深い場所へ辿り着く前に、潰(ツイ)えてしまった昔話。
何を期待してたのか、部長は不満気に見下ろす。
だって…不幸自慢がしたい訳じゃないのよ。
私の過去は消せるものなら消し去りたい、唯一の汚点。
両親も健在で、何不自由無く育ったあなたが犯したであろう、悪戯紛いの軽い罪とは訳が違う。
知られたくない。
もしあなたが……いえ、私に関わる身近な誰かがその事実を知ったとして…
傷付けられるのが、怖いの。
生きていく為だけに張っていた虚勢が…あの頃のような強(シタタ)かさとしぶとさが、今の私には不足しているから。
…きっと息をすることさえ、辛くなってしまうだろう。
「だいぶ楽になったわ。もう充分よ、有難う。」
そして私はやんわりと、あなたを拒絶する。
「…嘘つきだね。」
「え…?」
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