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もう、観念するしかない。
「…そこは母が入院していた病院ね。で、いつ頃私達は逢ったのかしら?」
当時の担当医や看護師、ありとあらゆる母の治療と看護に携わった人間ではない事は確かだ。
となれば、当人か関係者が入院していたか外来で診察に来ていたのか…
何年もの間、数え切れない人々が行き違っている院内で、いくら何でもそれは思い出せよう筈もなかった。
「…うーん、それでも思い出せないかぁ。俺ってよっぽど印象が薄かったんだな。結構強烈キャラだったと思うんだけど。」
そんな事を言われても。
日々時間とお金に追い回されて心も蝕まれていた時期に、赤の他人に関心なんて持てる筈ないじゃないの。
「…強烈キャラって?」
「あ、ヤバ。…今のは第二ヒントだったんだよ?けどこれでもダメとか、ホント完全にアウトオブ眼中ってヤツかな。昔の方が派手なナリしてたからもっと女性受けが良くて、モテたもんなのに。」
………自慢かしら?
自覚のある者が言うと、シラケる程嫌味に聴こえるって教えてくれる、親切な友人には恵まれなかったご様子で。
しかも自分で言っといて照れるとか…この状況ではキモいだけなんですけど。
『いや~ん、可愛い~!』
『ギャップ萌え~!』
などと、キャピキャピ胸キュン出来ないところが、女子力低下の証か?なんてちょっぴり動揺したりもしつつ。
「…心配しなくても、今のあなたでも充分魅力的なんじゃない?会社の女の子達だって、あなた一人に怖いくらい色めき立ってるじゃないの。… ねえ、そんな事より私達の事だけど、その当時に会話とか、ーーんっ!?」
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