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いきなり押し当てられた唇。
「ちょ、やめ…んふっ、」
この男はいつも突拍子無く勝手ばかりだ。
誓約では『合意の上でなら』と決めていた筈なのに…
抵抗虚しく今度は角度を変えて、深く侵入して来る。
「う……」
押し返す腕も、のし掛かる重さに耐え切れない。
ここまで来て、またはぐらかすつもりなのかと無性に腹が立った。
「ーーーっ!ンンッ!」
振り上げる事の出来ない拳で、部長の肩を叩いて叩いて…
「ふぅ…っ、」
銀の糸を引きながら漸く離れた、その光沢を放つ唇は…
クッ、と口角を上げていた。
「可愛いね…ヤキモチ、焼いてくれたの?」
そして、何とも嬉しそうな顔。
……はぁ…多分また、思い込み全開の部長ワールド炸裂だ。
勘違いも甚だしい。
何処にそんな要素があったのだろうかと考えてみても、心当たりは全く無くて。
「ふざけないで。どうして、私がヤキモチなんか焼かなきゃいけないのよ?」
ひたすら疑問符を浮かべていると、
「ツンデレってさ、愛情の裏返しなんだって。知ってた?」
意味不な答えが返ってきた。
「知らないわよ。それはどなたの定理かしら?」
って言うか、そもそも私はツンデレキャラじゃないし。
冷たい視線を送ってやれば、
「あれ?俺が他の子とデートするって知ってから、いつも以上に素っ気なかったのは誰だったっけ?」
勝ち誇った笑みを浮かべる。
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