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ああ…この人、本物のド天然馬鹿なんだ…
そう改めて認識したのは言うまでも無く。
「あなたって…可哀想な人ね。」
何もかもを手にした勝ち組の人生を歩んではいても、完璧な人間はいないって事だ。
ほら、神様はやっぱり残酷なのよ。
人は常に周囲の目に晒され嘘をついたり演技をしたり…愚かしい物語を繰り返す生物。
神様はそんな中途半端な出来損ないの人間しか造らなかったくせに、自らの意思で不確かな関係を築かせようと努力を強いる。
でも…どれだけ頑張ってみた所で、付き合いが深かろうが長かろうが、崩れ去るのは一瞬なのに。
試すのは人の心の弱さから。
私がどの位、部長に興味を示すのか…
それを知りたい一心で無駄な画策を企てていたなんて、何だか腹が立つより憐れに思えて来た。
価値の無いモノを欲しがる王子様は、まるで滑稽な裸の王様にも似て。
そして私はと言えば。
本音を語らず嘘をつく汚い役どころから連想するに精々、舌切り雀なんかがお似合いだろう。
「可哀想?俺が?どうして?」
不思議そうな顔で、疑問符ばかりを浮かべる部長。
「だって…こんな意味の無いかけ引きに時間を費やして何が楽しいのか、私には理解出来ないわ。」
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