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…呆れた。
居酒屋で田中さんが言っていた読みは、ほぼドンピシャリ…さっすが伊達にこの変人の世話を長年焼いている訳じゃないわね。……って、あれ?
「ーーーーあ、…ああ!」
やっと気付いた自分の鈍さに、心底究極に腹が立つ。
「田中さん酷いっ!やっぱり偶然なんかじゃないんじゃない!!仕事だとか言って…嘘つきっ!!」
「う、ぐっ…落ち、ついて…」
あの狐め!白々しいったら!!
心の中では更に悪態づき、一人で絶叫しながら握った拳にも余分に力が入る。
「襲われたのは偶然にしても!直ぐに助けに来れたのは、田中さんに見張らせていたからでしょう!?そうよ、あんなにタイミング良くドラマみたいに颯爽と登場するなんて、出来過ぎだと思ったわ!!」
「ぐっ…ちょっ、ちょっと…その辺については釈明するから…手を離してくれない、かな…?」
掴んだ襟元をグイグイ絞める形で迫っていたから、心無しか部長の顔色は違う意味で青ざめて来た気がしないでも無い。
「…ふん、洗いざらい吐いてもらうわよ。」
態度の悪い脇役の刑事さながら、押しやって手を離す。
部長は軽く咳き込み、安堵の息をついた。
「えっ、と…田中の事なんだけど…怒らないでやってくれる?あいつはあの時、本当に母方の仕事中だったんだ。…見張りを頼んだのは他の使用人達で、田中はたまたま君と遭遇したからこっそり連絡を寄越しただけだよ。」
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