不純と矛盾

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ノーブランドとは言っても営業職という仕事柄、見た目と履き心地に付け加え耐久性も重視している。 故に、安い代物って訳じゃないし愛着もあったけど、こうなっては仕方ない。 接着面を削れば盗聴器は取れる。 傷が付いたところで、仕掛けられていた事にさえ気付けない程度に裏側まで見やしない。 強いて理由を挙げるとするならば… 「俺としては何が起こるか心配だから、そのまま使ってて欲しいけど…どうしても嫌なら、お詫びに君が好きな靴をプレゼントするよ。フェラガモがいい?それともシャネル?」 この人のこういう無神経さが胸糞悪いから、二度と履きたくないだけだ。 壁にもたれ腕組みする姿も様になっていて、それすら癇に障るったら。 「要らないわ、あなたからのプレゼントだなんて冗談じゃない。どうせ今度は踵の中にでも埋め込むつもりでしょう?」 どうせ警察にしたって抱き込まれているのは目に見えている。 被害届を出しても相手にされないのがオチだわね。 でも裸足で帰る訳にもいかないから、今日の所は帰りにどこぞで代わりのヒールでも買って、盗聴器が張り付けられた方はドブ川にでも捨ててやろう。 そう心に決め、帰り支度をすべくバッグを探しにまた寝室へ戻ろうと前を横切ると、 「大丈夫、同じ手を使う程貧困な発想はしてないよ。今度から一人で外出する時は、ボディガードでも付けようかと思ってたとこだし。」 また凝りもせず、飄々と宣う。
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