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多分お互いにカチンとキて、深い溜息を零す。
「…切りが無いわ、帰る。」
「わかった、家まで送るよ。……と言いたいトコだけど、」
一歩踏み出した時、後ろから腕を掴まれ抱きすくめられた。
「折角のオフだし…このままデートしない?仲直りの意味も込めて、ね?」
髪に唇を寄せ囁く、甘い誘惑。
「嫌よ、気分じゃないわ。」
もう、誤魔化されたりしないんだから。
絡んだ腕を解こうとして…くっ、この馬鹿力!剥がれやしない!!
「イエスと言うまで離さないよ。」
部長の大人気ない本気の力に絶句する。
こんな無理強いをすれば余計嫌われるものだとは、考え及ばないのか?
今迄どんな付き合い方をして来たんだろ?
束縛を快楽と感じるマゾ女?
それとも会社の子達と同じような…顔と金に目が眩んだ女達?
どちらにせよ、同類扱いは勘弁して欲しい。
「『押してダメなら引いてみろ』って言葉知ってる?私みたいな女にはね、強引なのは逆効果よ。」
「引いたらそのまま平気で放置する癖に。」
…読まれてる…
言葉に詰まると、
「プッ、見え見えなんだよ。まぁ…誓約は無かった事にして、俺と今直ぐ結婚してくれるなら今日は諦めて返すけど?」
今度は無茶な駆け引きを持ち出す。
「…あなたねぇ……あ。」
この状況を打破する、良い方法が浮かんだ。
「なら、お見舞いに連れて行ってくれない?」
「?…お見舞いって、誰の?」
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